外科手術、がん化学療法、頭頚部放射線療法における周術期の口腔機能管理を行うことを専門としています。周術期に適切な口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎などの術後感染の減少、化学療法中の口腔粘膜炎の軽減、それに伴い平均在院日数の短縮、治療完遂率の向上など様々な効果が報告されています。当院には歯科口腔外科が設置されており、院内の医科と歯科が連携して周術期口腔機能管理を行っています。治療方針や手術日時が決まると、歯科受診、治療前口腔ケア、主科手術後、入院中・退院後の患者さまの口腔管理を一貫して実施しています。またかかりつけ歯科がある場合、地域歯科診療所と口腔機能管理を協働で行います。医科の診療情報や患者さまの口腔の情報を病院歯科が分かりやすく文書で提供し、地域歯科診療所で手術後の口腔ケアや歯科治療を安心して受けもらえるように配慮しています。
平成29年度 介入件数:1685件
術後回復期や意識レベルの低下による嚥下機能が低下することにより誤嚥が生じます。VAPは人工呼吸器装着時には気管チューブを介して唾液などが肺に流入することや、口腔内細菌により人工呼吸器回路が汚染されることで生じる肺炎です。術前、術直後、回復期に口腔ケアが介入することにより、肺炎の発生が減少します。
全身麻酔手術を行うにあたり、口腔内より気管チューブを挿管します。挿管時には器具を使用し、喉頭展開を行いますが、その際に口唇や歯牙(特に前歯)は損傷する可能性があります。また、チューブを抜く際の痙攣や「くいしばり」によって同様に歯の脱臼や、粘膜の損傷を生じさせることがあります。歯科が介入し、マウスピースを作成、動揺歯を固定することなどで、このようなトラブルが減少します。
がん薬物療法を受ける患者の約40%が口内炎を発症し、そのうちの半数が口内炎により治療の減量や変更を余儀なくされていると言われています。がん薬物療法は、繰り返し治療が行われることから、副作用も繰り返すことになるため、適切な対応かがなされないと何度も口腔合併症に苦しむことになりかねません。また口腔を含む放射線治療においては、非常に強い口腔合併症が高頻度で発症し、晩期合併症が起こった場合には、治療が終わった後でもトラブルに苦しむことになります。口腔合併症を少なくし、より質の高いがん治療を行うためには、口腔ケアによる支持療法は必須といえます。
周術期の口腔ケアを術前・術直後・回復期に分けて行います。
大阪労災病院 地域連携室
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