大阪労災病院感染制御チーム(インフェクション・コントロール・チーム:ICT)は2000年8月に病院長・副院長直属の組織として発足しました。医師(インフェクション・コントロール・ドクター:ICD)・看護師(インフェクション・コントロール・ナース:ICN)・検査技師・薬剤師・事務職のすばやい対応が取れる少人数で構成されています。ICTは定期的に病院内をラウンドするだけでなく、得られた感染情報に基づいて病院内で迅速に対応します。また、事務部を発信基地として病院内の必要な部署や保健所へ迅速に連絡され、問題点は後日開かれる院内感染対策委員会等へ検討議題として挙げられ討議されます。
抗菌薬適正使用支援チーム(AST; Antimicrobial Stewardship Team) は、感染症治療において効果的な治療、副作用の防止、耐性菌出現のリスクを軽減するため、医師、薬剤師、検査技師、看護師が中心となって抗菌薬の適正使用を推進しています。血液培養要請患者さまに対しては、早期に介入して抗菌薬の適切な投与量、投与間隔の提案、培養結果の基づいたde-escalationの提案などを行っています。
「すべての血液・体液(汗を除く)・排泄物は、何らかの病原体を持っている可能性があるものとして取り扱う」というのが現在の病院内感染を防ぐための基本となる考えです。これは1996年にCDC(米国疾病対策センター)で提唱され、日本でも「標準予防策」と呼ばれ、感染制御(院内感染防止)の基本の考えとされています。
微生物はどんな所にも存在しこれを絶滅することは不可能ですが、病原体の感染経路を断つ水際作戦を行うだけで十分な感染予防効果があります。下記のような場合も周囲に病原体を拡げないと考えられているので必ずしも患者さまの個室隔離の必要はありません。
床の汚れよりも、もっとも患者さまが手を触れる場所やベッド柵の汚れを見逃さないように心掛けています。気になった病室や寝具の汚れはすぐに病棟スタッフにお知らせ下さい。
病院では、すべての入院患者さまが病院内で新しい感染を受けないようにいつも清潔を保てるように努力しています。しかし抗菌薬の効きにくい菌が検出されることがあります。抗菌剤が効かないことから耐性菌と呼ばれています。
ほとんどの耐性菌の病原性は弱いので健康な人には恐くありません。しかし抵抗力が落ちていたり、カテーテルなどの管を体内に挿入されている患者さまが感染すれば重篤な状態になることがあります。治療によって菌を消滅させるか菌が自然にいなくなる事待って治療を行いますが、他の抵抗力の落ちた患者さまに感染させない注意が必要です。
耐性菌は空気感染するものではなく、患者さま、家族、面会の方、医療スタッフなどの手が菌に汚染された皮膚、器具などにさわり、その手で他の人に接触することで感染します。この場合の感染防止対策で重要なことは手洗いです。手洗いを励行することをきちんと守っていただければ他の人へ感染する心配はありません。病室へ入室時だけでなく退室時にも必ず手を洗って下さい。洗濯物、食器などに特別な消毒は必要ありません。
ICTはいつも病院内の耐性菌の検出状況を把握し、新たな耐性菌の出現を防ぐ努力をしています。