精巣は男性のみにある臓器で、股間にある陰嚢という皮膚に納まっています。精巣は左右1つずつあって卵形をしており直径は約4-5cmで主な役割は、男性ホルモンの産生と精子を造ることです。
精巣から発生する腫瘍を精巣腫瘍といいます。精巣腫瘍の発生率は人口10万人当たり1~2人で、発症年齢は乳幼児期と20~30歳代に多いです。男性全体の悪性腫瘍の約1%程度ですが、20~30歳代の男性に限れば最も発生頻度の高い悪性腫瘍です。早期から転移する特徴があり精巣腫瘍の約30%は発見時に既に他臓器に転移していますが、抗癌剤治療が奏効する場合も多く、しっかりと治療をすることで転移があっても約70%で治癒できるといわれています。
学校や仕事で忙しくても、下記に述べるような症状が出れば速やかに医療機関を受診することが一番重要です。
精巣腫瘍の発生には遺伝的因子と環境的因子が関わっており、父親や兄弟が精巣腫瘍であればそれぞれ4倍・10倍の発症リスクと言われています。また、片側に精巣腫瘍が見つかった場合も対側の精巣腫瘍リスクが25倍といわれています。さらに、精巣が陰嚢内に降りてこなくて鼠径部周囲に留まる、停留精巣という病気では3-10倍のリスクで精巣腫瘍になりやすいといわれています。それ以外にも、精巣外傷・周産期の母体の年齢・ホルモン環境等が精巣腫瘍の原因になります。
精巣腫瘍の初期症状は、痛みを伴わない陰嚢内のしこりや陰嚢の腫大です。
転移が生じると、その臓器に応じた様々な症状が出現します。例えば、全身のリンパ節に転移すれば皮膚のしこりや腹痛や腰痛、肺に転移すれば咳嗽や血痰が生じます。
精巣腫瘍は転移が存在しても、確定診断のためにまずは全ての症例で精巣を摘出します(高位精巣摘除術)。その結果、精巣の悪性腫瘍であればセミノーマと非セミノーマという2つのタイプに分類されます。そしてそのタイプに応じて経過観察・手術療法・放射線治療・抗がん剤治療を組み合わせて行っていきます。
病期とは腫瘍の大きさや転移部位から推測される、疾患の進行具合の目安です。下に精巣腫瘍の病期分類の表を示します。
日本泌尿器科学会取り扱い規約2005年第3版
国際胚細胞腫瘍予後分類(IGCCC)によるリスク分類と予後
下の表は腫瘍マーカーも含めた精巣腫瘍のリスク分類です。近年では予後不良に分類されても約70-80%で治癒が期待できます。
精巣腫瘍診療ガイドライン2015
当院では2014年から2018年までの5年間で計37例の高位精巣摘除術を行い、それぞれの患者様に応じた標準治療を行ってきました。場合によっては大阪大学医学部付属病院とも連携しながら治療を行います。
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
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高位精巣摘除術 | 6 | 5 | 11 | 7 | 8 |