■膵がんについて
・膵臓は胃の背側に位置する長さ15㎝、重さ100gほどの実質臓器で、消化酵素を多量に含んだ消化液(膵液)を十二指腸に分泌したり、インスリンと呼ばれる血糖をコントロールするホルモンを分泌したりしています。
・難治がんの代表である膵がん(浸潤性膵管癌)は手術が唯一根治を望める治療法ですが、手術だけでは体内に微小ながんが残ってしまう可能性が非常に高いため、化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を組み合わせた集学的治療を駆使して治療を行う必要があります。わたしたちは、主に膵がんに対する手術治療(詳細は後程説明します)を担当しています。
・手術が無事終わった後も、体内に微小ながんが残っている可能性が高いので、退院後外来で化学療法を半年間行っています(術後補助化学療法)。
・患者さまによっては手術前に化学療法や放射線療法を行ってがんの勢いを抑えた上で、手術をすることもあります(術前化学療法・術前化学放射線療法)。
・当初手術ができない(切除不能)と判断されても、化学療法や放射線療法が良く効いて、治療後に切除できるようになることもあります。
・治療方針は基本的にガイドラインに則りますが、豊富な経験をもとに個々の患者さまの状態に応じて、外科・消化器内科・放射線科・腫瘍内科スタッフが合同カンファレンスで最適な治療方針を決定しています。
■膵がんに対する外科的治療
・膵臓の手術(膵切除)は大きく分けて2種類あります。
1つ目は膵頭十二指腸切除術で、膵臓の頭の部分(膵頭部と呼んでいます)にがんができた場合に行われる手術です。この手術では、がんの存在する膵臓の頭の部分だけでなく、胆嚢・胆管・胃の一部・十二指腸・小腸の一部を切除し、胃と小腸・胆管と小腸・膵臓と小腸をつなぎかえる(再建といいます)非常に大がかりな手術で通常6時間程度かかります。
2つ目は膵体尾部切除術で、膵臓の真ん中あたりや尻尾の部分(膵体部・膵尾部と呼んでいます)にがんができた場合に行われる手術です。この手術では、膵臓の体部と尾部および脾臓を切除します。
・嚢胞性膵腫瘍(IPMNやMCNなど)や膵神経内分泌腫瘍といった膵病変に対しても手術適応を検討の上、膵切除術を行っています。良性疾患に対する膵体尾部切除では手術創が小さく患者さまへの負担が少ない腹腔鏡下手術も積極的に取り入れています。