■肝がん(原発性肝がん・転移性肝がん)について
・肝臓は、上腹部右側の横隔膜直下に位置する、腹腔内で最大の臓器です。重さは体重の約2%で、成人では約1000~1500gです。部位をわかりやすくするために、便宜上、名前や番号がついています。肝臓には約2500億個もの肝細胞があり、肝臓の中には肝動脈・門脈・肝静脈・胆管が網の目のように張り巡らされています。
・肝臓にできるがんを肝がんといいます。肝がんは原発性肝がんと転移性肝がんに分けられます。
・原発性肝がんは肝臓そのものから発生する肝がんで、肝細胞がんと胆管細胞がん(肝内胆管がん)がありますが、大多数は肝細胞がんです。肝細胞がんは肝炎ウイルスが原因になることが多いですが、他にもアルコール・肥満・糖尿病などからくる脂肪肝が、がんの原因となることも明らかになってきています。
・転移性肝がんは他の臓器にできたがんが血流にのって肝臓に運ばれてきて大きくなったもので、肝転移とも呼ばれています。
■原発性肝がんの治療
・原発性肝がんには肝細胞がんと胆管細胞がん(肝内胆管がん)がありますが、大多数は肝細胞がんです。肝細胞がんの治療法には、主なものとして手術療法(肝切除)・ラジオ波焼灼療法・肝動脈(化学)塞栓療法(TAE, TACE)があります。
・私たちが担当する肝切除はがんをその周囲の肝臓の組織を手術で取り除く治療です。
・ラジオ波焼灼療法はがんに向けて皮膚から電極を突き刺して、通電加熱法によりがんを壊死させる方法です。
・肝動脈化学塞栓療法は、がんを栄養している動脈から抗癌剤を注入したり、動脈自体を塞栓してがんを壊死したりする方法です。
・肝細胞がんが見つかった場合は、肝臓の機能・がんの個数・がんの大きさ等をもとにしてガイドラインに則って治療方法の選択を行っています。肝切除は肝機能が比較的良く(肝機能AまたはB)、がんの個数が少ない場合(1-3個)に行うことが多いです。しかし実際には様々な理由でガイドライン通りに治療できない場合があります。当院では、外科・消化器内科・放射線科・腫瘍内科スタッフが合同カンファレンスを行い、豊富な経験をもとに個々の患者さまの状態に応じて最適な治療法を選択しています。
■転移性肝がんの治療
・転移性肝がん(肝転移)の中でも大腸がんの肝転移は、切除可能であれば肝切除が有効とされています。当院では下部消化管外科スタッフと緊密に連携しながら、手術適応を検討しています。がんの大きさや個数に関わらず切除可能と判断した場合には積極的に手術(肝切除術)行っています。大腸がん以外のがんの肝転移に対する手術の有効性は明らかになっていませんので基本的には化学療法を行っています。
■肝切除について
・当院肝胆膵外科グループでは原発性肝がん・転移性肝がん合わせて年間60件以上の肝切除術を施行しています。肝細胞がんの患者さまの肝臓は慢性肝炎や肝硬変になっていることが多く、肝切除が難しい場合もありますが、当院では超音波凝固切開装置やソフト凝固電気メスなどの医療機器を活用し、出血の少ない安全な手術を施行しています。
・手術創が小さく患者さまへの負担が少ない腹腔鏡下手術も積極的に導入しており、比較的大きな肝切除(区域切除や葉切除)に対しても学会と連携しながら取り組んでいます。