診療科・部門

腎臓内科

Nephrology and Diabetes

慢性腎臓病(CKD)

21世紀になり注目されてきた疾患概念で、「尿蛋白陽性などの腎疾患の存在を示す所見」もしくは「腎機能低下(糸球体濾過量が60mL/分/1.73m2以下)」が3ヶ月以上続く状態を言います。慢性腎臓病がある人では、単に将来腎不全に至る可能性が高いだけでなく、心血管疾患を発症する危険性も大きいこともわかっています。当科では、病診連携を活用し、他の医療機関や診療科と協調して総合的に慢性腎臓病の診療に当たっています。当科では保存期慢性腎臓病の教育入院を積極的に行い、腎不全進行抑制に注力しております。慢性腎臓病患者さまの診療には図1に示すように個々の患者さまの病態に応じて、多面的なアプローチが必要となります。教育入院を通じて一例を示しますと図2のようなスケジュールで、栄養管理、血圧・体重・尿量測定に加え、血液検査、エコー検査等を含めた詳細な検査を行い、入院中に栄養指導、服薬指導さらに腎臓病に対する講義等も行っております。教育入院を通じて、個々の患者さまの腎機能増悪因子や心血管合併症を正確に評価することで、内服調整を行い、今後のより詳細な治療方針を立案することにより入院患者さまの退院後の腎機能低下速度抑制及び心血管イベント発症の抑制に努めております。

慢性腎臓病(CKD)図1

慢性腎臓病(CKD)図2

慢性腎炎、ネフローゼ症候群

検尿異常(蛋白尿、血尿)を指摘された患者さまに対して精査を行います。必要に応じて、腎生検という腎臓の組織の一部を採取する検査が必要になる場合があります。採取した腎臓の組織を光学顕微鏡・免疫蛍光抗体法(場合により電子顕微鏡も施行)による観察を行い、検討会を経て約7~14日後に結果を出し、その方に最もふさわしい治療を模索しています。当科では通常、腎生検検査入院は月曜日に入院して火曜日に検査を行い、その週の週末に退院するスケジュールで行っていますが、病態により、そのまま入院継続のうえ、ステロイド剤や免疫抑制剤を主体とした治療を行う場合があります。

血液浄化療法

腎不全が進行し尿毒症の状態(末期腎不全)に至ると、薬や食事療法以外に腎臓の機能を補う治療(腎代替療法)が必要になり、その主なものに血液透析があります。新規に血液透析を始められる方で内シャントがすでにある方は、約2~3週間入院の上で週3回の血液透析を受けていただき、安定したところで退院して、ご都合の良い近隣の透析施設へ紹介させていただいています。腹膜透析患者の透析導入及びその後の管理も行っています。血液浄化療法には、他に劇症肝炎や重症の自己免疫疾患に行う血漿交換や免疫吸着、家族性高コレステロール血症に行うLDLアフェレーシス、炎症性腸疾患に行う白血球除去療法といった治療法があり、必要に応じてそれぞれの担当科と共同で行っています。

多発性嚢胞腎

多発性嚢胞腎は腎臓に嚢胞がたくさんできて腎機能が徐々に低下していく遺伝性の病気です。今までは有効な治療法がなく、約半数の方が60歳前後に末期腎不全に至り透析になっていました。平成26年3月より腎嚢胞増大抑制と腎機能保護の治療薬(トルバプタン)が使用可能となりました。バソプレシンを抑えるトルバプタンという薬に嚢胞増大を抑制し腎機能低下を抑制する期待が高まっています。トルバプタンの適応を判断するには腎サイズを測定する必要があり、開始する際は入院が必要です。当院では図1に示すような「トルバプタン導入入院」を行っております。新しい治療薬により透析導入を遅らせる事をめざして治療を行っています。

多発性嚢胞腎