深部静脈血栓症とは足から心臓へと帰っていく血管(静脈)に何らかの原因によって血の塊(血栓)ができて詰まってしまう病気で、足の浮腫(むくみ)の原因となることがあります。また、足にできた血栓が血流に乗って肺の血管(肺動脈)まで飛んでしまった場合、呼吸困難が出現することや、重篤な場合はショック状態に陥ることがあります。(肺血栓塞栓症<エコノミークラス症候群>)。
多くは片側の下肢の静脈に血栓ができるため、片側の足が浮腫み、太ももやふくらはぎが太くなります。浮腫が強い場合は痛みや赤み、放置していると皮膚が茶色に変色し、潰瘍を形成することがあります。
肺血栓塞栓症では、突然息が苦しくなることや胸が痛くなることがあります。
長期間寝たきりの状態の方、長時間同じ姿勢でいること(飛行機での長時間フライトや車中泊など)、足の骨折時のギプス固定や手術の後、妊娠中、脱水や肥満などが原因となります。また、癌を患っていると静脈血栓ができやすいと言われています。
血栓が多量で症状が強い場合などは、足の静脈からカテーテルという細い管を挿入し、血栓溶解薬を血栓ができている場所に直接投与する方法や(図1:経カテーテル的血栓溶解療法)、血栓を吸引、破砕する方法があります。
静脈(腸骨静脈)が背骨(椎体)と動脈(腸骨動脈)の間に挟まれて圧迫される解剖学的な異常(腸骨静脈圧迫症候群またはMay-Thurner症候群と呼ばれます)がある場合は、静脈の圧排を解除する目的にステントという金網を留置することで症状が著明に改善されることがあります。(図2-4 )
図1:経カテーテル的血栓溶解療法. ( Merit Medical)
図2 腸骨静脈圧迫症候群(May-Thurner症候群)
Reza F. et al: N Engl J Med 2007;357:53-9より一部改変
静脈性の潰瘍がある場合や浮腫が強い方は弾性包帯や弾性ストッキングを適宜着用します。
また、脱水にならないように水分を取り、よく歩くことも重要です。
深部静脈血栓症は発見が遅れて放置していると、血栓によって静脈血管のポンプ機能が低下して浮腫が長期にわたって残ることや、足のしびれや皮膚炎、潰瘍が発症から時間が経ってからでも生じることがあります(血栓後症候群後遺症)。
治療はできるだけ早く開始することが望ましいと言われています。また、肺塞栓は重篤になることもあり注意が必要です。
足の浮腫み、特に片側の浮腫みが出現した場合は早めに受診をしてください。