大動脈解離とは、大動脈と呼ばれる血管(心臓から拍出された血液を全身へ送る通り道)が突然裂ける病気です。
「突然の背中の痛み」が典型的な症状とされています。
心筋梗塞と並んで命にかかわる救急疾患のひとつとされており一刻を争います。
高血圧をお持ちの方に起こりやすい病気ですが、若い方にも起こることがあります。
血液検査(大動脈内の血液の流れの異常を反映したDダイマーという数値に異常がでます)
造影CT検査(造影剤を使用することで大動脈内の血液の流れや裂け目が明瞭にわかります)
血管が裂けることにより、真腔(本来流れていた通り道)と偽腔(新たにできた通り道)が形成されます。
偽腔の拡大により真腔が圧排され、様々な臓器(脳、心臓、上肢、腎臓、腸管、下肢)に血流低下が起こり、血流低下が強い場合には、組織が壊死(組織がダメージを受けること)することがあります。
偽腔が拡大したことで瘤化し(コブが大きくなる)、破裂することがあります。
側面像(体を横からみています)
下行大動脈(背中を走る血管)に解離あり
横断像(体を水平に切ってみています)
心臓に解離が進み、心臓外に出血あり
一般的には2-3週間の入院期間が必要となります。
入院中は、リハビリプログラムにしたがって段階的に活動レベルを増加させ、入院前の日常生活に戻れるようにサポートしております。
血管の裂け目が進行しないように、人工血管(図1)やステントグラフト(図2)を使用し血管の裂けた部分を修復する治療方法があります。
また慢性期に血管が瘤化した場合にも同様の治療を行います。
内科治療中、状態が急激に悪化することがあり、緊急手術を要することがありますが、当院では心臓血管外科医師が24時間体制で待機しているため、緊急時にもすぐに対応が可能となっています。
急な背中の痛みを自覚された際は迷わず救急車を要請し心臓専門医による診察検査を受けることをお勧めします。
当院では24時間体制で心臓専門医の医師が滞在しており、心臓外科医師による緊急手術も可能な体制をとっていますので、救急隊の方を通じて搬送を依頼していただければ対応させていただきます。
大動脈の一部の壁が、全周性もしくは局所的に拡大した状態。正常血管径の1.5倍以上の拡大を動脈瘤と定義します。腹部では30mm(正常は20mm程度)以上を腹部大動脈瘤と呼びます。
瘤径別の破裂率を示します(図AAA破裂率)。50mmを超えると急激に破裂のリスクが高まりまるので治療が必要です。
動脈硬化危険因子の管理、特に禁煙は最も大切です。高血圧の方は通常よりやや低めにコントロールすべきでしょう。CTやエコーで定期的に瘤サイズを測定し適切な時期(瘤サイズ≧50mm)に手術するのがベストです。
従来から行われている開腹による人工血管置換術(OSR; open surgery repair)と近年行われるようになった大動脈ステントグラフト(EVAR; endovascular aneurysm repair)があります。基本的にOSRのリスクが高い(高齢、開腹手術の既往など)症例で解剖学的条件を満たせばEVARが選択されます。EVARはOSRに比し傷が小さく、入院期間も短く、身体の負担が少ない手術です。当院では、循環器内科、心臓血管外科、末梢血管外科で、それぞれの科の特徴を活かしながら(不得意な部分は補完しながら)3科合同で取り組んでいます。