研究代表者:大阪労災病院 副院長 岩崎 幹季
令和5年4月~令和8年3月
勤労者世代に多い脊柱靭帯骨化症の手術治療成績向上と動物モデル確立による新規予防的治療法の探索
脊柱靭帯骨化症は脊柱管内の靭帯(後縦靭帯・黄色靭帯)が骨化することで脊柱可動域が低下したり、脊髄が圧迫されることにより四肢麻痺などの神経障害を起こす疾患であり、特定難病に指定されています。予防的治療法や治療薬剤はなく、脊髄圧迫症状を生じた症例には手術が行われますが、術後に後遺症を残すことが少なくありません。手術治療には主に前方法と後方法による神経圧迫の解除(除圧術)と動的因子の解除(固定術)があります。骨化の部位、骨化形態や骨化占拠率、脊柱アライメント、動的因子などを総合的に考慮にして術式を選択しますが明白な基準は確立されていないのが現状です。手術対象者としては勤労世代である中高年が多く、治療成績は術後のADLや復職状況に大きく影響します。術後の後遺症のため復職が遅れたり、また復職しても術前と同じような仕事に復帰できないこともあります。手術治療成績向上のためには、それぞれの術式の特徴を考慮し適切な術式選択と新しい術式の開発が望まれます。
本研究では、NPO法人大阪脊椎脊髄グループ(OSSG)の手術症例データベースを利用し、脊柱靭帯骨化症の手術症例を後ろ向きに研究し、手術症例の特徴や手術成績について評価検証します。また、頸椎後縦靭帯骨化症の手術症例において、大阪労災病院における除圧なしの前方固定術に一期的あるいは二期的に椎弓形成術を追加する術式と他施設における従来の手術方法の手術成績と合併症について評価検討を行います。さらに、脊柱靭帯に内軟骨性骨化を生じ神経障害を誘発する新規動物モデルの確立を目指します。50歳代前後の壮年期に発症することが多い脊柱靭帯骨化症に対して、その手術成績の向上とともに予防的治療が確立すれば勤労者医療に大きく貢献するものと考えています。
令和5年4月1日~令和8年3月31日