子宮は全体として中空の西洋梨のかたちをしています。球形に近いかたちの体部は胎児の宿る部分であり、下方に続く部分は細長く、その先は膣に突出しています。この部分が頸部で、膣のほうから見ますと奥の突きあたりに頸部の一部が見えます。その中央には子宮の内腔に続く入口があり、この入口を外子宮口と呼んでいます。
婦人科のがんで最も一般的な子宮がんには、子宮頸部がんと子宮体部がん(内膜がん)があります。
子宮頸部がんは、この外子宮口付近に発生することが多いのです。普通の婦人科の診察でこの部分を観察したり、検査すべき細胞や組織を採取することが可能です。したがって、早期発見が容易なわけです。
頸部のがんは非常にゆっくり増殖しますが、がん細胞が子宮頸部に見つかる以前の初期に正常でない細胞が見つかります。この細胞を異型細胞と呼び、細胞診ではこの段階から診断することができるのです。
年齢別にみた子宮頸部がんの罹患(りかん)率は、20歳代後半から40歳前後まで増加した後横ばいになり、70歳代後半以降再び増加します。近年、罹患率、死亡率ともに若年層で増加傾向にあります。罹患率の国際比較では、頸部がんが途上国で高いのに対し、体部がんは欧米先進国で高い傾向があります。
ヒューマン・パピローマ・ウイルス(human papilloma virus:HPV)の感染が、子宮頸部がん、特に扁平(へんぺい)上皮がんの確立したリスク要因とされています。子宮頸部がん患者さまの90%以上からHPVが検出され、ハイリスク・タイプ(16型や18型など)で浸潤(しんじゅん)がんへの進展がみられやすいことがわかっています。子宮頸部がんのリスク要因として、低年齢での初交、 性的パートナーが多い、多産、他の性行為感染症、が報告されていますが、その多くはHPV感染のリスク要因です。また、喫煙は確立したリスク要因とされています。その他、経口避妊薬の使用、低所得階層との関連性も指摘されています。子宮頸部腺がんについても、扁平上皮がんと同様に、HPV感染や経口避妊薬の使用との関連が指摘されています。
婦人科のがんで最も多いのは子宮がんです。子宮がんは子宮頸部がんと子宮体部がんに分けられます。子宮体部がんは子宮内膜がんとも呼ばれるように、胎児を育てる子宮の内側にある子宮内膜から発生する病気です。一方、子宮腟部や頸管の上皮から発生したがんが子宮頸部がんです。また、成人になると子宮はくぼんだ西洋梨状になります。その子宮の筋肉に発生する病気の子宮肉腫とは異なります。
同じ子宮のがんであっても、 子宮体部がんと子宮頸部がんは、診断・治療・予後においてすべて異なりますので、子宮体部がんと子宮頸部がんの違いを正しく理解することが大切です。
年齢別にみた子宮体部がんの罹患(りかん)率は、40歳代後半から増加し、50歳代から60歳代にピークを迎え、その後減少します。近年、子宮体部がんは年齢に関係なく増加傾向にあります。罹患率の国際比較では、頸部がんが途上国で高いのに対し、体部がんは欧米先進国で高い傾向があります。
子宮体部がんは、エストロゲンによって増殖するタイプと、エストロゲンに関係なく発生するタイプに分けられます。確立したリスク要因としては、閉経年齢が遅い、出産歴がない、肥満、エストロゲン産生がん、がリスク要因とされています。薬剤では、乳がんのホルモン療法に用いられるタモキシフェンや、更年期障害等に対するホルモン補充療法などで用いられる、エストロゲン製剤の単独使用などが挙げられます。その他のリスク要因として糖尿病、高血圧、乳がん・大腸がんの家族歴との関連が指摘されています。