緩和ケアセンター

緩和ケアチームは、がんに伴うさまざまなつらさをやわらげるための専門のチームです。緩和ケア科以外の科で入院中・外来通院中の患者さまが「からだ」と「こころ」「生活」の調和を保ちながら、その人らしく過ごせるよう、また治療にのぞめるように、多職種メンバーが協力しそれぞれの視点から支援しています。
当院の緩和ケアチームは、緩和医療の主体である患者さまとそのご家族を中心に、病名告知を含めた十分なインフォームド・コンセントやコミュニケーションを大切にし、身体的・精神的・社会的サポートを行っています。『からだ』『こころ』『生活』などのさまざまな視点からサポートしますので、身体の不調や辛さを我慢しないで、主治医・看護師・薬剤師などに声をかけて下さい。

• 身体症状の緩和を担当する医師(泌尿器科・消化器外科・消化器内科・産婦人科・耳鼻咽喉科・麻酔科・歯科口腔外科・腫瘍内科)
• 精神症状の緩和を担当する医師
• 緩和ケアを担当する認定看護師
• お薬の使い方を説明する薬剤師
• 栄養をサポートする管理栄養士
• 心のケアを担当する臨床心理士
• 社会的な視点から生活や経済的問題に対応するソーシャルワーカー
• リハビリスタッフ　など

毎日チームメンバーが依頼のあった病棟へラウンドして、主治医や病棟看護師とともに相談しながら患者さまの困り事に対応しています。痛みやだるさなどの症状が緩和されない時、精神的な症状(不眠や不安、抑うつなど)でコントロールが必要な時、金銭面の問題や退院までの在宅支援など主治医だけでは解決困難な問題に対して、チームが直接患者さまをラウンドし、解決策を考え提案しています。緩和ケアチームは主にがん患者さまが対象ですが、入院中に限って非がん患者さまの症状コントロールも行っており、2019年度から2022年度の3年間で64名の方の症状緩和を行っており、現在も介入数は増加してきています。

緩和ケアチームに依頼があった患者さまは、必ず毎週定期的にチームメンバー同士で話し合って、情報を共有しています。症状が変化した場合や、対応困難な場合にはその都度主治医も交えた話し合いの場を持つようにしています。

緩和ケアの必要な患者さまに対し、緩和ケアを行うための外来を毎日午前、午後に開設しています。がん治療中であっても、外来通院中に痛みなどの症状があり、主治医の判断やご本人らの希望があれば並行して診察を行っています。
地域のクリニックや他病院からの紹介患者さまも受け入れていますが、繊細な対応が必要な科の特性上、初診の場合は紹介状が必要です。

緩和ケアの患者さまは予定通りに物事が進まないことも比較的多く、症状の変化により予約外の受診や救急部受診をされる可能性は高いと考えられます。当科の2020年4月から3年間の3136件の受診状況を調査した結果、全受診件数で予約外受診は20.1%に及び、5件に1件は予約されていない状況での受診でした。また、救急車を利用した受診も7.0%でした。さらに予約外受診の48.4%が緊急入院に至っていることから、必要な時に受診や入院ができることが大事だと考えています。

• 当院かかりつけの患者さまは、まず主治医へご相談ください。
• 他院の患者さまは主治医に相談の上、病診連携窓口を通じて緩和ケア科のご予約をお取りください。
• 予約のない初回受診はできません。
• 不明なことがありましたら、平日午前8時15分～午後5時までの時間に緩和ケアセンターへご連絡下さい。

がんの告知を受けたり、再発の説明を受けたりした際に多くの患者さまが今後の生活や仕事のこと、治療をどのように選択して良いのか悩みます。当院では、がんの告知時や再発の告知時に認定看護師が説明に同席し、主治医からの説明を充分にご理解いただけたか確認しています。医師の説明を補足説明したり、病気を理解しやすくするよう正しい情報をお伝えしたり、心理的なサポートも行いながら患者さまの価値観を尊重した意思決定ができるように支援しています。

基本的に主治医から依頼が看護師に入ってから介入します。
場所：がん看護カウンセリング外来

がん看護に関する相談のご希望の患者さまは「がん相談支援センター」をご利用ください。がん関連の認定看護師が常駐しています。

大阪ろうさい病院では、緩和ケア医を主治医とした緩和ケアを必要とする患者さまが入院するための緩和ケア病床があります。緩和ケア病床は緩和ケア病棟とは違い、区切られた専用の病棟でなく一般の患者さまと同じ環境の入院になりますので、面会を含めて療養環境に制限はありますが、急性期病院ならではの環境を活かして、がんの治療中から緩和ケアを提供できます。
また、一律的な対処でなく、緩和的放射線治療やステント留置、輸血や神経ブロックなどの処置を患者さま、ご家族のご希望と状況に合わせて使用し、症状コントロールをしています。症状のコントロールができても自宅への退院が難しい場合には、訪問診療医や訪問看護の調整を行ったり、近隣の緩和ケア病院等への転院の調整も行っています。
当院の緩和ケア病床ご利用希望の方は、主治医と相談の上、緩和外来へ紹介してもらってください。

院内や地域の医師を始め、様々な医療スタッフが必要な場所で緩和ケアを実践できるように、当院では年に6回、医療者を対象に、定期的な緩和ケア教育を実施しています。また、堺市内の主要病院が協働して、事例検討会や緩和ケア普及のためのイベントを行っています。市民を対象とした医学文化教室、小中学校への学校教育、病院を挙げてのがん市民フォーラムも例年実施しています。

院内のがん患者さまを診察する診療科は厚生労働省から指定されている「緩和ケア研修」を受講しており、基本的な緩和ケアを提供できるようにしています。この研修会も年に1回当院で実施しています。

緩和ケアセンターでは、患者さまや家族に対して院内だけでなく、住み慣れた地域で必要な緩和ケアが提供されるように、地域の病院やクリニック、介護施設等と連携する体制をとっています。どこの病院がどのような対応が可能かを可視化した緩和ケアマップを作製しています(https://sakaikanwa.jp/index.html) 。

■論分発表

• 藤村敦子, 河鰭憲幸. 当院の非がん疾患への緩和ケアチーム介入の介入充実の実態と今後の課題. Palliative Care Research, 19(1), 77-81
• ウォン政代, 河鰭憲幸. 急性期病院における緩和ケア外来受診状況と望まれる在り方に関する検討. Palliative Care Research, 19(2), 115-119

• 奥田ゆり子, 河鰭憲幸, 任幹夫. 当院緩和ケアチーム介入の入院時の評価方法と今後の課題. Palliative Care Research, 18(1), 67-71

• Noriyuki Kawabata and Mikio Nin. Effect of continual quality improvement of palliative care consultation teams by iterative, customer satisfaction survey-driven evaluation. BMC Palliat Care. 2021; 20(1): 46

• Noriyuki Kawabata, Akiko Hata, Tomokazu Aoki. Effect of Aromatherapy Massage on Quality of Sleep in the Palliative Care Ward: A Randomized Controlled Trial. J Pain Symptom Manage. 2020; 59(6): 1165-1171

令和6年1月1日現在